日本 国内プロジェクト
 
シカをめぐる日光国立公園の生態系
−森、ネズミ、鳥、そしてハエとの関わり−



調査地:栃木県日光市

主任研究者:

須田 知樹博士、野生生物保護学会事務局員

スタッフ :

森本 英人、東京農工大学農学部野生動物保護学研究室
上野 岳人、東京農工大学農学部野生動物保護学研究室

調査期間:
(鳥チーム)
チーム1 :5月19日(月)− 23日(金)
チーム1a :5月19日(月)− 21日(水)
チーム1b :5月21日(水)− 23日(金)
チーム2 :6月23日(月)― 27日(金)
チーム2a :6月23日(月)− 25日(水)
チーム2b :6月25日(水)− 27日(金)
チーム3 :7月21日(月)− 25日(金)
チーム3a : 7月21日(月)− 23日(水)
チーム3b : 7月23日(水)− 25日(金)

(ネズミとハエチーム)
チーム1 :6月12日(木)− 15日(日)
チーム2 :10月10日(金)− 13日(祝、月)

(森林チーム)
チーム1 :8月7日(木)−10日(日)
募集人数:
最小4人、最大10人

研究分担金:
鳥チーム:チーム1,2,3:学生¥30,000、一般¥32,000
鳥チーム:チーム a, b  :学生¥18,000、一般¥20,000
ネズミとハエチーム1  :学生¥33,000、一般¥35,000
ネズミとハエチーム2  :学生¥36,000、一般¥38,000
森林チーム        :学生¥36,000、一般¥38,000

調査概要:
写真1
ニホンジカは森林植生に様々影響を与える。最近、日光をはじめとして、丹沢や大台ヶ原などの状況もマスメディアで報じられ、シカと植生が密接な関わりを持つことは、一般的にも知られるようになってきた。本プロジェクトは、シカ−森林の関係にとどまらず、森林を生息場所とするネズミや鳥とシカの関係にも着目する。本研究の目的の一つは、同所的に生息する他の動物との関係を明らかにすることで、シカを中心とする生態系の構造的側面を総合的に理解することである。さらに、シカの生態系における役割は、採食等による植生の改変だけではない。死亡したシカは、ハエ目昆虫を主とする死肉食動物にとって重要な食物資源となる。本研究のもう一つの目的は、食物連鎖における腐食連鎖に着目し、シカの生態系における機能的側面を追跡することである。本研究は、森林植生と上記の動物種を主たる研究対象とし、生態系の構造と機能の両側面からの知見から、生態系のシステムそのものを理解することを最終的な目標とする。したがって、具体的な研究対象種を上記に掲げたが、研究対象は「生態系」である。

調査の目的:
森林植生については表日光地域のダケカバ林を対象として毎木調査を行う。ダケカバは森林動態においてパイオニア種として知られ、成林過程の初期段階に出現する。ダケカバ林の構造を長期的に追跡することで、表日光地域の森林の成林過程の解明を試みる。ネズミに関しては、シカの採食強度の違いにより生じた異なる林床植生を持つ環境において、スナップトラップを用いてネズミを捕獲し、種構成、生息数、繁殖状況を比較する。主任研究者のこれまでの研究成果から、シカによる植生改変はネズミの生息密度に影響を与えることが示されており、本調査は結果の追試と、繁殖状況への影響の有無を明らかにすることが目的である。ネズミと同様に草食動物の採食が、自然植生の変化を通して間接的に鳥類群集へ影響を与えていることが、アメリカや対馬で報告されている。しかし、日本では対馬での研究例しか報告されていないため、さらに知見を増やす必要がある。今回のプロジェクトでは定点観察とライントランセクトによる個体数調査と行動観察を行うことで、植生を媒介とするシカと鳥類の群集構造の関係を解明する。そのため、異なる環境に生息する鳥類群集への影響が明らかとなる。ハエについては、市販の食肉を供試試料として森林内に放置し、ハエに限らず、試料への蝟集昆虫の黙視観察、捕獲を行う。本テーマは、昨年度の東京農工大学農学部野生動物保護学研究室の卒業生である小石真樹氏の卒業研究によって、萌芽的かつ基礎的な知見が得られており、本調査では定量的で詳細な検討へと研究を進展させることが目である。

ボランティアの役割:
鳥類の個体数調査と行動観察では、3カ所の調査地においてそれぞれ4カ所の定点をもうけ、各定点で一日2時間から3時間の観察を行う。またライントランセクトでは定点周辺で約1kmのラインを設定しラインをゆっくり歩きながら鳥類の観察を行う。本調査は鳥類の識別ができることが条件となる。出現予想種を別添のリストに示したので参考にして欲しい。鳥類の識別には黙視だけでなく、さえずり、地鳴きも用いるので、これらも修得していることが条件となる。奥日光地域は渓流、湿原、針葉樹林、広葉樹林など多彩な環境に恵まれるため、希少種も含めて多様な鳥類の観察に最適である。

ネズミの捕獲では4カ所のトラップサイトにそれぞれ100個のスナップトラップを設置し、捕獲を行う。捕獲したネズミは外部計測(頭胴長、尾長、後肢長)と同定後、解剖し、食性分析のための胃内容物と繁殖状況確認のための雌の子宮と卵巣、雄の睾丸を回収する。本研究は、生態学的研究であるが、形態学や生理学の手法も同時に用いる。種々の手法を経験することで生物学全般に関する知識を得ることができる。

ハエに関しては、林床植生の異なる2カ所に、重量の異なる試料を配する。これは、実際の動物の体重を想定しており、数十グラムオーダー(ネズミなどを想定)、数百グラムオーダー(コントロール)、数キログラムオーダー(ウサギなどを想定)の3段階で試料への蝟集昆虫を観察する。試料の重量と蝟集昆虫の種類は経時的に変化することが指摘されており、動物以外の分解過程における昆虫類の役割を認識することができる。

植生調査(毎木調査)においては、昨年度ダケカバ林内に設定した1haの調査区内の高さ120cm以上の全ての樹種について樹木の座標、種名、地際直径、胸高直径、高さを計測し、各主幹の樹冠の被服範囲を記録する(樹冠投影図)。毎木調査と樹冠投影図の作成は最も基本的な森林調査法であり、森林の植物群落の理解を深める教育的要素がある。また、樹種の同定を通して、植物への興味の喚起、知的好奇心の刺激という効果も期待できる。そして森林動態への理解を深めることで、森は単純に形成されるのではなく、「森は動く」という現象によって、常に変化していることを実感できる。

各チームの平均的な1日の予定:
写真2
(鳥チーム)
03:00  起床、朝食、片付け、出発準備
04:00〜4:30  宿舎発、移動(徒歩、自動車)
04:30〜7:30  調査
08:00〜11:30 仮眠、自由時間
11:30〜13:30 昼食準備、昼食、昼食片付け
13:30〜14:30 レクチャー
14:30〜15:00 出発準備、宿舎発、移動(徒歩、自動車)
15:30〜18:30 調査
19:30〜20:30 夕食準備、自由時間、随時入浴、夕食
20:30〜21:00 夕食片付け、自由時間、随時入浴
21:00  就寝

(ネズミとハエチーム)

06:00〜07:00 朝食準備(朝食・弁当当番)
07:00〜08:30 起床、朝食、朝食片づけ、出発準備
08:30〜10:00 宿舎発、移動(自動車)
10:00〜16:00 調査、適宜休憩および昼食
16:00〜17:30 移動(自動車)、宿舎着
17:30〜18:30 夕食準備(夕食当番)、自由時間、随時入浴
18:30〜20:00 夕食、夕食片づけ、自由時間、随時入浴
20:00〜21:30 レクチャー
21:30〜23:00 自由時間
23:00  就寝

(森林チーム)
写真3
06:00〜07:00 朝食準備(朝食・弁当当番)
07:00〜08:30 起床、朝食、朝食片づけ、出発準備
08:30〜10:00 宿舎発、移動(自動車)
10:00〜15:30 入山、移動(徒歩)、調査、適宜休憩および昼食
15:30〜17:00 下山(徒歩)
17:00〜18:30 移動(自動車)、宿舎着
18:30〜19:30 夕食準備(夕食当番)、自由時間、随時入浴
19:30〜20:30 夕食、夕食片づけ、自由時間、随時入浴
20:30〜22:00 レクチャー
22:00〜23:00 自由時間
23:00  就寝

宿泊地施設:
(ネズミとハエおよび森林チーム)
トレーラーハウス・日光だいや川公園オートキャンプ場
http://www.geocities.co.jp/Outdoors-River/4283/campdaiya.html
栃木県今市市瀬川733-3
Tel. 0288-23-0201
調査地まで車で1〜1.5時間
設備、施設:寝具、トイレ、コインシャワー、コインランドリー (近隣に温泉有り)
最寄りのスーパー、コンビニまで車で10分
県営森林公園内の施設で自然散策路などもあり緑に囲まれた施設
交通案内:東武鉄道下今市駅、JR今市駅下車、タクシー(¥1,000以内)

(鳥チーム)
宇都宮大学付属戦場ヶ原演習林
栃木県日光市大字日光
Tel. 0288-55-0020
調査地内の施設で、移動時間はほとんどない
設備、施設:風呂、トイレ、寝具 (近隣に温泉有り)
最寄りのスーパー、コンビにまで車で20分
戦場ヶ原の南東端に位置し、戦場ヶ原散策をするには最適
交通案内:東武鉄道またはJR日光駅から湯元温泉行きバスで赤沼下車、徒歩5分
なお、21日1泊は、宇都宮大学演習林の旧館を利用します。風呂、水場、トイレがありません。したがって、食事と風呂は湯本か中善寺に行きます。

集合場所と集合時間:
集合: 全チームとも、宿泊地に午後5時まで。
解散: ネズミとハエチームは最終日の午後4時。 鳥チームと森林チームは最終日の午前10時、宿泊地。

食事:
食事は、当番制で自炊します。腕自慢の料理を作ってください。
朝食:パン、卵、サラダ
昼食(お弁当):おにぎり、缶詰
夕食:カレーライスなどを予定。

持参装備品:
雨具、長靴またはトレッキングシューズ、フィールドノート、腕時計、筆記用具、水筒、手袋(軍手可)、洗面用具、着替え、医薬品(虫除け、バンソウコウ、胃腸薬など)、健康保険証、もしあれば方位磁石、双眼鏡など。
 
このウィンドウを閉じる