調査概要:
オオカミは旧北区、新北区に広く分布した中型肉食動物で、食物連鎖の最上位に位置します。かつては、牧畜や狩猟の敵対動物として駆逐され、世界中の多くの地域から姿を消しました。映画 「ダンス・ウィズ・ウルヴズ 」にも描かれていたように、欧州からの移民による北米大陸におけるオオカミ狩りは有名な話であり、開拓の進行とともに広大な合衆国領土からオオカミは姿を消していきました。西欧諸国でも、一部の山岳地帯に小規模な個体群がかろうじて残存している程度です。我が国では、農耕への加害動物であるシカやイノシシの捕食者であるオオカミは、古来、農業の神として自然崇拝の信仰対象でした。しかし、江戸時代後期の狂犬病の移入や、明治維新後の牧畜の開始によって、有害動物視されるようになりました。その結果、20世紀初頭に我が国のオオカミは絶滅しました。
オオカミが絶滅した地域において生じた現象はどこでも共通しています。すなわち、被食動物の増加です。狩猟が盛んに行われていた時期には、これら被食動物の増加はある程度抑制されていましたが、国立公園や自然保護区の設置、狩猟人気の低下によって狩猟圧から開放された被食動物は、爆発的にその個体群を成長させました。その結果、特にシカ類などの大型植食動物は、植物を食い尽くし、森林の後退、土壌流出などの重大な生態系撹乱を引き起こすようになりました。
この様な大型植食動物による生態系撹乱の認識や生態学的知識の進歩、そして世界的な自然保護運動も相まって、近年、生態系におけるオオカミの重要性が指摘されるようになり、オオカミは、欧米では、自然保護運動の象徴的動物としての地位を得るようになりました。そして、合衆国における国家政策によるオオカミ復活計画に代表されるように、オオカミの自然生態系への復帰は積極的に検討される議題となっています。
本研究は、この様な背景の中、我が国へオオカミを復活させるための基礎的知見を得ることを主要な目的としています。加えて、モンゴルでは遊牧が盛んで、牧畜への加害動物としてのオオカミ感が根強く残っていると言われます。本研究を通して、 「蒼き狼 」の末裔を称する現地住民とオオカミの良好な関係を築くことも重要な課題です。
調査の目的:
本調査は、野生動物調査の基礎である食性分析を中心とします。まず糞内容物分析法を用いてオオカミの食性を明らかにし、食物リストを作成します。採取した糞の分布と糞内容物の構成割合を照合し、被食動物の分布との関係を検討します。この過程において、家畜の被食程度や発生場所なども解析し、牧畜へ与えるオオカミの被害強度に関しても考察します。
次に、食物リストに基づき、主要被食動物の分布を把握します。将来的には、オオカミの環境選択指標としての被食動物の分布状況の検討への発展を考えていますが、今回の調査では、先行研究によって主要な被食動物と指摘されているマーモットの分布状況を把握し、その個体数推定法確率を目的とした試験的調査を行う予定です。
ボランティアの役割:
実地踏査によるオオカミの糞採集、定点観察によるマーモットの行動観察等を予定しています。フスタンヌール国立公園(Hustain Nuruu National Park: HNNP)およびボグドハンマウンテン国立公園(Bogdkhan Mountain Strictly Protected Area: BMSPA)とも地形は穏やかです。調査中の踏査距離は10km/日程度を予定していますので、日常生活を普通に行う体力があれば問題ありません。
オオカミ−植食動物−植物を巡る食物連鎖を中心として、生態系の構造的側面と機能的側面を開設する予定です。また、現地にてオオカミ研究に従事しているトンガラグッチャ博士によるレクチャーも予定しています。
チーム1は丸山先生と、チーム2&3は須田博士とフスタンヌール国立公園およびボグドハンマウンテン国立公園を各3日間調査します。なお、チーム1は日本オオカミ協会の会員ボランティアも合同参加します。
宿泊施設:
フスタンヌール国立公園およびボグドハンマウンテン国立公園ともに付属の宿泊施設を使用します。ホテルタイプとモンゴル式テントがあり、シャワー、トイレ、食堂が完備されています。食事は付属施設の食堂を利用します。
両地域とも車で1時間以内に病院があります。 電話:HNNP :976-11-32-1426 e-mail:takhi@hustain.mn
BMSPA:976-11-31-0240 nuht@magicnet.mn
集合場所と時間:
チーム1:ウランバートル空港到着ロビー、21:30。
丸山先生と合流します。
チーム2&3:モンゴル共和国、ウランバートル空港到着ロビー、21:30。
須田博士がウランバートル空港到着ロビーにいます。
解散はモンゴル航空501便の成田行きに間に合うよう、ウランバートルの空港まで送ります。
航空機スケジュール:
往路:モンゴル航空OM502便 成田発:月曜15:30、ウランバートル着:同日21:00
復路:モンゴル航空OM501便 ウランバートル発:月曜10:00、成田着:同日14:30
持参装備品:
雨具、長靴またはトレッキングシューズ、フィールドノート、腕時計、筆記用具、手袋(軍手可)、洗面用具、着替え、医薬品(虫除け、バンソウコウ、胃腸薬など)、防寒具(ダウン、セーターなど)、健康保険証またはその写し。
(重要)プロジェクトの変更について
プロジェクト開始1ヶ月前で募集最少人数に満たない場合は、開催を中止することがありますので、ご了承ください。申し込みされた方には中止が決定次第、ご案内いたします。なお、本年は日本オオカミ協会の会員も参加する予定です。
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