プログラムの成果

教師のリアルな体験が
子どもたちに感動を与える

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周囲への影響
井上 陽平
滋賀県

2013年ブラジルの野生生物とその回廊調査に参加。帰国後、国際的な課題に対する学習を続けている。

簡単にプロフィールを教えて下さい。
社会科の教員として30年近くなりますが、大学在学中に南の島々を放浪した原体験がその後の人生観に大きな影響を与えたと思っています。2年前には日本語教員の資格も取得しました。仕事の合間にALT(外国語助手)の先生に日本語や日本文化を教えています。
プログラム参加によって環境教育への想いはどのように変化しましたか?
環境そのものを考えるより環境と人間の関係を考えたいと思い、フェローシップに応募しました。そして現地での体験はその関係性を変化させてくれたと思っています。それまでは対立的にとらえていた「自然VS人間」「自然VSテクノロジー」でしたが、実は「自然の維持発展に人間の力は欠かせない」「テクノロジーが自然を救っている」ということがわかり、柔軟に環境のことを考えられるようになりました。
私自身はアウトドアに全く関わらない「非自然派」ですが、そんな人間でも環境をよくすることに貢献できることがわかったのが一番大きな収穫でした。だから今も環境教育の基本は、その時から「人間が環境を壊す存在からよくする存在に変わることができる」というメッセージです。
子ども達の驚きや感動はどのようなものがありましたか?
動物園で見るような動物が野生のままでいることに驚くことは予想通りでした。大都市から調査地までの写真を並べて移動の過程を説明しましたが、シカが飛び跳ね、ダチョウが走る場面になるとがぜん興味を持つ生徒が多かったと思います。また「非自然派の人間(私)ができる環境保護は何だろうか」というテーマで進行した授業の中で、「私はアウトドア興味ないけど、この環境学習はおもしろかった」と言ってくれた生徒がいました。「土地の20%をつなげて森の回廊を作ろう」という課題に対して、自然に集まって話し合い、回廊を作った生徒の活動には感動しました。
なにか周囲に及ぼしたインパクトを物語る事柄があれば教えてください。
上記の環境学習の授業を含め、多くの国際的な課題に対する学習を続けた中、生徒が自主的に国際理解サークルを立ち上げ、中学校卒業後高校3年まで地元の国際フェスタでの発表を続ける活動をしてくれました。今は大学生や専門学校生となっています。
本プログラムの成果について特に伝えたいことがありますか?
私が主に取り組んできた国際理解教育や人権学習などとリンクすることがたくさんあります。SDGsで環境も労働とお金も人権もみんな含まれるのは、そういうことなんだろうと思います。また世界に出て、世界の人とつながって調査研究するという体験は、どんどん内向き化する日本の流れに逆らう素晴らしい取り組みであると思います。「世界とつながる」というテーマは失わず、このようなプログラムは形を変えても続けてもらえるとうれしいです。
今でも忘れられない出来事があれば教えてください。
今も一緒に参加した何人かとSNSでつながり、そのうち1人は互いの国を訪問しあうような関係です。彼らは誰一人「環境バカ」ではなく、日常生活の喜びや都市生活の便利さと地球環境のバランスをきわめて自然に取っていました。体験中に夕食の時間が来た時、資料整理を早々に切り上げて彼らは素早く食堂に向かい、中途半端なままでは終われないと研究室に残ろうとする私たち日本人2名に対し、「日本人は働きすぎって聞いたけど、本当だなぁ」と言っていました。食事もおしゃべりも研究も同じ比重という姿勢に驚きつつ、だから長続きしたり新たな発見をすることができるんだろうなあと思いました。また体験中に私の意見を聞いてくれていたメンバーが、環境と経済との関係の話題になったときに「ほら、君の好きな話になってきたぜ」と言いながら論議をすすめてくれるなど、はみだしがち、孤立がちだった私に対しても寛容であったこともうれしかったです。