研究者の方へ
アースウォッチの野外調査プログラム
野外調査に市民を環境ボランティアとして送り出し、調査の手伝いをすることで人的支援をしています。これまで50を超える日本国内での野外調査に、1500人余りの環境ボランティアが参加しています。 現在運営している野外調査はこちら 。
アースウォッチは、研究者にとっても、参加するボランティアにとっても、互恵的なプログラムを目指しています。野外調査に市民が参加することで、教育の機会を得て、持続可能な環境について理解し、持続可能な社会へ向けて必要な行動を促進できると考えています。
資金的な支援
ボランティアは、往復交通費や宿泊費を自己負担して野外調査に参加します。 アースウォッチは、研究者および研究スタッフの現地滞在費、交通費、その他研究活動費用を企業などのご寄付や助成を募り、研究を支援します。 現在運営中のプログラムは、回数に応じて10万円~100万円程度で実施しています。
研究領域
研究は、以下4つを重点的な領域として設定し、同領域あるいは同領域を含む複数に合致するものを対象としています。
- 海と陸とをつなぐ領域:沿岸生態系・海洋環境と陸域の環境など
- 人間と野生生物の境界線の変動:里山環境・奥山と人里の環境など
- 種に関わる領域:固有種・希少種・外来種の分布の変化など
- 日本の自然観に基づいた領域:伝統的な資源利用、持続可能な資源管理のための知恵など
- その他、アースウォッチ・ジャパンのミッションに即すると思われる領域・テーマ
重視している点
研究者との野外調査プログラムを通じて、参加する市民に、自然に対する科学的な価値観が醸成され、次の世代に環境意識が広がっていくことを期待しています。 そのため以下の三点を考慮して、サイエンスアドバイザリーコミッティ(プログラム検討委員会)の審議のもとに野外調査プログラムを開発しています。
- 地球環境問題の理解や解決、持続可能な社会の実現に貢献する研究であること。
- 調査に参加した市民が、研究テーマを自分の問題として捉えられるような「自然と人との関わり」の視点があること。
- 広く複数分野・機関が連携する研究や、「自然の多様なつながり」を重視した研究など分野横断型の視点があること。
研究者とアースウォッチの協働運営
野外調査プログラムは、日帰りや週末2日、長くても5日以内で設計しています。調査経験のないボランティアに配慮して、調査内容、手法や安全管理の注意喚起などを調査解説書に記載して配布するほか、当日に再度アナウンスし、事故のない野外調査を行っています。 研究者とアースウォッチは以下の役割分担で野外調査プログラムを協働します。
| 研究者 |
アースウォッチ |
| 研究の意義、調査内容とその手法、装備やスケジュールなどの情報を提供する。 |
現地での野外調査プログラムを研究者と調整し、企業や助成機関に資金的な支援を募る。 |
| 現地で調査の指導やレクチャーを行う。 |
ボランティアが現地で安全に調査の手伝いができるように、調査地で安全管理の確認をおこなうほか、調査解説書にて注意喚起を行う。 |
| 調査データを取りまとめ、一年間の成果概要を報告する。(活動報告書に掲載します。) |
ボランティアの募集と参加するまでの手続きや保険加入を行う。 |
プログラム検討委員会について
設立趣旨
アースウォッチは、市民が自らの手で地球環境を守っていく社会づくりを目指して、これまで、環境問題について実証的な研究活動を行っている研究者の野外調査の現場に、一般市民をボランティアとして派遣する活動を行っています。
地球環境の問題は、日々の人間活動によるものであり、私たちの生活に密接に結びついています。そのため問題の解決には、個々の市民が問題を認識し自らの責任において持続可能な社会へ転換していこうという動きを巻き起こしていく必要があります。しかし、具体的に何が起こっているのか、その将来はどうなるのか、何を行っていけばよいのかということを科学的に知る機会が少なく、市民の活動には十分につながっていないのが現状です。
その一方で、環境問題は人間の社会活動と両立させながら対策を測っていく必要があります。このためには環境変動要因を明らかにし、それが将来どのように影響するかを予測しながら、対策を考えなければなりませんが、これには科学的な環境調査が不可欠です。しかし、環境変化は様々な要因が複雑に絡み合っているため、広い領域の環境を長期間にわたりモニタリングする必要があり、時間・資金・人手を要する地道なものです。
このためアースウォッチは、研究者と市民とを結びつける仕組みをつくり、40年もの間活動を継続発展させてきました。アースウォッチ・ジャパン(以下「EWJ」といいます。)は、日本での活動を拡げるために、世界で行われている調査活動にボランティアを派遣するほか、国内の研究者とともに調査プロジェクトを積極的に開発し運営しています。(昨年度のボランティア人数: 海外25名、国内303名)
プロジェクトの調査対象、研究内容はEWJにとって「顔」そのものであり、アメリカ、イギリス本部、オーストラリア支部の三大拠点においてはプログラム開発、更新にあたって組織内の専門の科学者(アメリカ、イギリス)、Science Advisory Committee(オーストラリア)によって厳格な審査がなされています。
EWJにおいても、今後、国内プロジェクト開発を進めていくに当たっては、アースウォッチのミッションに沿うことを基本としながら、加えて日本の自然環境や、日本独特の自然と人とのつながりに目を向けたプロジェクトを開発するなど、その運営プログラムにしっかりとしたポリシーを保持していくことが重要と考えます。
以上の観点から、EWJでは専門的な見地から理事会の諮問に応えるサイエンスアドバイザリーコミッティ(プログラム検討委員会)を設立致します。
サイエンスアドバイザリーコミッティ メンバー
| 議長 |
| 石田秀輝 |
東北大学名誉教授
(合)地球村研究室 代表社員
分野:バイオミメティクス、自然に学ぶテクノロジー |
| メンバー |
| 丹治 富美子 |
詩人、作家
分野:源氏物語、五感、日本の自然観、自然との共生 |
| 中静 透 |
国立研究開発法人森林研究・整備機構理事長、森林総合研究所所長
分野:森林生態・生物多様性・植物生態 |
| 八木 信行 |
東京大学大学院農学生命科学研究科 教授
分野:農学国際専攻 国際水産開発学教室 |
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京都大学フィールド科学教育研究センター 教授
分野:潜水による魚類生態調査、水産学
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