プログラム概要
長崎・佐賀・福岡・熊本の4県に囲まれた有明海は、3つの干潟がラムサール条約に登録され、ムツゴロウなどの特産種が多数生息する生物多様性の宝庫です。その豊かさは、周囲を多良山系や阿蘇・九重山系に囲まれ、筑後川など多くの河川が流入する、森里海のつながりによって支えられています。
有明海周辺では、20世紀後半に大規模な河川改修が続き、1997年の全長7㎞に及ぶ諫早湾潮受堤防の設置を契機に湾奥部の干潟が消失しました。これらの大規模な事業は社会事情が反映されたものであり、これによって地域の事業者の間で溝が深まるなど、社会にとっても大きな影響が出ています。どうすれば再び豊かな自然と地域社会のつながりを戻せるかが本地域の課題となっています。
このプログラムでは、潮受堤防の外側に流れ有明海に注ぐ長里川と、堤防の内側に流れ海に流入しない境川、諌早市中央を流れる本明川を中心に、ニホンウナギ、そのエサとなる生物や共生する生物の生息状況を調査し、比較・検証します。
ボランティアの役割
ボランティアは、以下の調査を手伝いながら、研究者や地域の関係者と交流し、森と海のつながりや諫早湾の課題について現場で学びます。
・もんどり調査:もんどりと呼ばれる水生生物のトラップを一晩仕掛け、回収された生物を記録する。
・イシマキガイ調査:イシマキガイという体長2cmほどの貝の密度を調べる。
・タモ網調査:タモ網を用いた魚類や甲殻類などの水生生物の採集を行い、採集した生物の種類・大きさ・個体数を記録する。
・ゴカイ調査:ウナギの餌となる干潟の砂泥を大型スコップで採取し、それを篩でふるって、砂泥中に潜っているゴカイ類などを採集する。
調査については、当日にガイダンスを行います。
また、研究者が生物を見分けるお手伝いをしますので、特別な知識や技能は必要ありません。
研究者の紹介

田中 克(たなか まさる)先生
京都大学名誉教授、NPO法人SPERA森里海・時代を拓く理事長代行
稚魚の生理生態など水産生物学が専門。森から海までのつながりの統合学問「森里海連環学」を提唱し、その循環を解明するための調査研究や社会活動に従事。

佐藤 正典(さとう まさのり)先生
鹿児島大学名誉教授
有明海など内湾の底生動物、特に多毛類の分類・生態の研究。干潟の重要性を説き、その保全・再生に取り組む。