和歌山県みなべ町の千里浜は、アカウミガメの産卵地として本州最大規模を誇る地域です。上陸密度が高く遭遇確率が高いことから、1990年以降、個体識別を基礎にした生態研究やバイオロギング*研究の拠点として研究者が調査し、本種の生態解明に多大なる貢献をしてきました。
同町内においては、千里浜のほかに周辺の岩代浜と高浜でも例年上陸が確認されています。また、岩代浜で標識装着した個体が千里浜に上陸したり、その逆のケースが散見されることから、「みなべ」に産卵に訪れるウミガメは同一の集団と考えられます。その個体数や1頭あたりの年間産卵回数、回帰率など個体群の増減や今後の動向を予測するためには、千里浜だけでなく、岩代浜でも同様の個体識別調査が必要ですが、人員不足等の理由から、これまで実施できていません。
市民ボランティアの手を借りて、包括的な科学的調査を実施することにより、IUCNのレッドリストで絶滅危惧II類に分類されるアカウミガメの生態のさらなる解明を目指します。