いま、北太平洋のアカウミガメは絶滅の危機に瀕しています。成長海域にあたる米国やメキシコでは既に莫大な国費を投じて手厚い保全管理措置がとられています。唯一の産卵地である我が国でも、速やかに周辺海域における本種の生態と脅威を解明し、効果的な手当てしていくことが求められています。
国内の主な産卵地では、メスに標識を装着して個体識別する調査が長年継続されており、数年後に再び同じ砂浜に産卵に訪れるメスは全体の約3割に過ぎない一方で、他の産卵地で見つかる例はほとんどないことが分かってきています。これと同様の結果が、国内第2の産卵規模を誇る種子島で2015年より実施した本プログラムによる個体識別調査からも得られたことから、メスの回帰率の低さは死亡率の高さによることが浮き彫りになってきました。とはいえ、調査は産卵最盛期の8日間に限られるため、今後も継続して回帰率の精度を高めていく必要があります。また、海における脅威を特定するため、産卵後の回遊生態を明らかにしていく必要があります。
そこで、本研究では、引き続き種子島において産卵地を夜間踏査し、産卵個体を対象に標識を用いた個体識別調査を実施するとともに、新たにGSPアルゴス送信機を産卵後のメスに装着して衛星追跡していきます。かつて浦島太郎を産んだ国の矜持として、北太平洋からアカウミガメを絶滅させるわけにはいきません。梅雨時期の夜間調査は肉体的にもハードではありますが、どうか皆様のお力をお貸しください。