日本の周辺海域は、実は世界でも有数の生物多様性ホットスポットで、4,000種くらいの魚が生息していると言われています。しかし多様な魚がどのように日本沿岸に分布し、季節変動するのかについては、まだわかっていないことも多いのです。海の中で私たちは自由に動き回れませんから、そこを泳ぎ回る魚の調査は簡単ではないのがその理由です。また、調査の難しさは保全の難しさでもあります。温暖化をはじめとする地球環境の急激な変化が海に棲む生物に及ぼす影響が心配されていますが、それを知る方法がとても限られているのです。
このプロジェクトの目的は3つ。一つ目は、最新の生物調査法「環境DNA」と市民の皆さんの力を借りることで、これまで誰もみたことのない解像度で「日本沿岸の魚の生物多様性」を観測すること。二つ目は、世界中の科学者が自由に利用できる生物多様性のデータベースを作ること。三つ目は、自分の手で身近な生態系の様子を知ることで、日本沿岸域をどうやって保全・利用していこうか考える足がかりを作ることです。
ボランティアの皆さんのご協力のもと、これまでに得られたデータは、日本沿岸の魚類の生物多様性の理解を大きく前進させつつあります。2024年は、さらに大きな目標に向けて新しいプロジェクト、すなわち2017年に科学者が実施した大規模調査を、今度は市民ボランティアの皆さんと実施するプロジェクトを立ち上げます。2017年から今日までの7年間の間に、地球温暖化により海水温の記録的上昇や黒潮大蛇行など海の環境は大きく変化しました。本調査の実施により日本沿岸の生物多様性がどのように変容したか、これまでにない規模と精度で明らかにできるでしょう。決して容易ではありませんが、皆さんと一緒に挑戦したいと思います。
※このプロジェクトは、マニュアルをもとに調査する形式をとります。詳細はプログラム解説書をご覧ください。
近藤先生からのビデオメッセージもご視聴ください。