プログラム概要
社会の変化とともに、自然と私たちの関係も大きく変化しています。かつて稲作の場だった水田のなかにも、休耕田・耕作放棄田となり陸地化が進んでいる場所があります。こうした場所を再び湿地へと再生することで、水田が持つ水質浄化、治水、生物多様性保全など、多様な機能が再び発揮されることが期待されます。
このプログラムでは、現代の里山としての価値を「野生の生物に評価してもらう」ことを重視し、耕作放棄田の自然再生による生物多様性への効果をモニタリングします。水深、流速、水温、植生の密度などにより、その湿地を利用する動物が変わります。水生昆虫や両生類などを調べながら、人と生物の共存を支える湿地のあり方を考え、グリーンインフラ(自然を活かした社会基盤)としての機能を明らかにします。
気候変動と人口減少が進むこれからの日本で、自然のはたらきを社会に活かす発想は間違いなく重要になるはずです。耕作放棄田で泥あそびをするような活動ですが、調査への参加によって、これが実は最先端の科学研究であることを理解していただけると確信しています。
ボランティアの役割
生物調査と地形・環境調査の2グループに分かれ、以下の作業を行います。グループの担当する調査は午前と午後で入れ替え、全員が生物と環境の調査にかかわります。里山整備の前にこれらの調査を行い、自然再生の効果を評価していきます。
生物調査:ピットホールトラップや捕虫網を使って昆虫を捕獲し、研究者の指導により種名を記録します。
地形・環境調査:自然再生前の地形を記録するための測量を行うほか、スコップで深さ50㎝程度の穴を掘り、地下水位を測定する調査の手伝いをします。
調査や作業の方法については事前にガイダンスを行います。また、研究者が昆虫を見分けるお手伝いをしますので、特別な知識や技能はいりません。
研究者の紹介

西廣 淳(にしひろ じゅん)先生
国立環境研究所気候変動適応センター 副センター長
生物多様性保全・自然再生を促進するための調査研究に従事。専門は生態系を考慮した気候変動適応や湿地の生物多様性保全・生態系修復。

田和 康太(たわ こうた)先生
国立環境研究所気候変動適応センター 特別研究員
水生昆虫・魚類・両生類・水辺の鳥類など、田んぼや湿地の生物の研究が専門。