アースウォッチ・トークスとは
アースウォッチの運営に携わる多彩な役員や、活動を指導してくださっている研究者の皆様による講演プログラムです。生物多様性の保全にどう関わるかなど、各々の専門と体験から語っていただくシリーズです。
SDGsのターゲット「13. 気候変動に具体的な対策を」、「14. 海の豊かさを守ろう」、「15. 陸の豊かさも守ろう」について具体的な活動例を、野外活動の意義や楽しさも含めて紹介、2022年のCOP15で決定された「2020年以降の生物多様性に関する世界目標」に関する話題を紹介など、多岐にわたる内容をお楽しみいただきながら、アースウォッチの活動や理念の特長をご理解ください。
第十五回2024年8月6日(火)19:00-20:00
「世界農業遺産での雑草草生栽培 – 山梨県峡東地域の果樹園での取り組み」
恵泉女学園大学 澤登 早苗 名誉教授
有機農業に関する教育・研究を行いながら、ブドウとキウイフルーツの有機・農薬不使用栽培を長年実践しているフルーツグロアー澤登の共同経営者でもある。アースウォッチでは、今年度から始まる新たなプログラムで指導。専門は園芸学・有機農業。
持続的な農業を考える上では生態系と農業の関係はとても重要な課題です。現代の一般的な農法において、雑草は、害虫など有害生物の発生源となったり、栄養や水分の吸収競合を起こすなど悪影響を及ぼすものと考えられています。しかし、伝統的な農法の中には、雑草を生やし、適正に管理しながら農業を行う方法もあります。
山梨県峡東地域は、世界農業遺産に登録されており、この地域での特徴的な果樹栽培法として、「雑草草生栽培」という農法が用いられています。雑草草生栽培は、地表面を耕起せず、生えてきた草を定期的に刈り、地表面に敷き詰めることで、多くの植物が生育する草原として維持管理する農法です。この方法は、生物多様性の保全につながるだけでなく、農業的にも土づくり効果※1、土壌流亡の防止などの効果があり、農業と生物多様性の保全を持続可能な形で実現するものです。
アースウォッチとの取り組みにおいては、今年度から「果樹園の生きもの」というプログラムをご指導いただきます。伝統的な農法によって両立している農業と生物多様性の現状を市民と共同で調査し、対立して語られることの多い農業と生物多様性の関係について考えるプログラムです。
今回は、世界農業遺産登録のキーポイントでもある「雑草草生栽培」についてご紹介いただき、これからの農業と生物多様性の間に持続可能な関係を築くためのポイントについて考えます。
※1土づくり効果;土壌への有機物の補給と土の硬さ、透水性、通気性など、土壌の物理的な特性の改善のこと。
申し込み:Zoomによるオンライン形式(無料、事前申し込み制)
次回 2024年11月を予定