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| 成果報告: オーストラリアの消え行くカエル |
| I. 2001年11月〜2002年3月の調査 |
調査地
国立公園と世界遺産地区(オーストラリア中東部の多雨林保護区); バリントン国立公園、グロースター・トップス国立公園、ワッシュプール国立公園、州境ヤブラ国立公園国有林:チチェスターおよびワタガン山系 |
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| II ボランティア数 |
合計 21名
チーム2: 2001年11月16日−29日、10名
チーム3: 2002年1月21日−2月3日、11名 |
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| III ハイライト |
a) 調査の問題点:
両生類減少という事態の原因究明と解決策の探求。
この期間中、特に焦点を当てて調査された問題:
- 現在、絶滅に瀕した数種のカエルの個体群が分布地域の南部で小さくなっている原因は、自然の要因に拠るものなのだろうか?それとも外界からの悪影響によるものなのだろうか?これまでの研究で、両生類の病原菌(Chytridiomycosisツボカビの一種)がオーストラリア東部の小川に生息するカエルの減少要因になっていることが確認された。我々は特に、個体数が少ない個体群では本当に病原菌感染のレベルが高いのか、という問題について情報を収集することを目標にした。
- マーク・リキャプチュアー法(捕獲した個体に印をつけて放す調査方法。同じ個体が次の調査の際にも捕獲された場合、新たに捕獲された個体と区別することができ、行動や分布の調査に役立つ)を用いて、つがいの個体群をモニターし、個体数の統計的数値のあらゆる変化を記録した。注目に値することに、モニターされた個体群の中には様々な発達段階のカエルが見られた。ある個体群ではオタマジャクシと変態したばかりの仔カエルが観察されたが、このような段階の個体がほとんど観察されない個体群もあった。個々のオタマジャクシに印をつける方法を用いて、我々はオタマジャクシの生存率を調査し、ライフサイクルの、この段階におけるカエルの行動も調べた。
b)調査のハイライト:
ボランティアは5つの主要地域で、絶滅の危機にあるカエルの個体群調査に協力した。それぞれの地域に複数の調査地があった。
ある地域では、カエルは元気で何の問題も見られず、喜ばしいことに、その個体群は強いと報告できる。ここで“強い”というのは、ライフサイクルの全段階で高い生存率が認められたことを意味する。このようなフィールドでは、カエル本来の生活をしている成体がいる証拠を集め、また無数のオタマジャクシと変態したばかりの仔カエルの行動を観察した。
このような状況とは対照的に、どんなカエルの姿もほとんど見られず、がっかりさせられた地域もあった。我々は、これらの観察地域の違いに困惑し、環境にどのような変化が起こったのかを問い続けている。健康な個体群は、森林の生物共同体におけるカエルの役割について計り知れないほど貴重な情報を我々に提供し、また個体群が消滅する前の、他の地域の様子を思い描かせてくれる。元気に暮らしている地域の個体群を観察することは、一見異例なことのように思えるが、そうした個体群は、カエルが消滅してしまった地域との違いを評価する唯一の手がかりを提供してくれるのである。
あいにく減少が始まる過程以前のカエルの個体群に関する調査は、ほとんどおこなわれたことがない。カエルの消滅した領域に再び種を導入しようとするのなら、健全な個体数の理解につながる個体数の変化や幅を知ることが重要である。つまり、個体群が減少しつつある領域の周辺部における調査は、絶滅に関わる要因を理解する絶好の機会を与えてくれるのである。
絶滅に瀕したカエルの個体群をいくつかモニターした結果、カエルの減少は現在も続いており、その推移が地理的パターンを示していることが明らかになった。はるか昔から生息していた地域の8割以上で減少が認められている2種のカエルについては、厳密にモニターした個体群では減少の兆候が全く見られなかったが、もう一方の個体群は数年以内に完全に絶滅しそうな段階にあった。残念なことに、今のところ両生類の減少傾向を逆転させることができる管理方法は存在していない。 |
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| IV 目的 |
a)背景:
過去20年間で、オーストラリア全土のカエルの5%にあたる9種類のカエルがオーストラリア東部から消滅し、現在絶滅したと推定されている。このうち7種類が河川で生息するか、繁殖するカエルである。同じ期間に、ニュー・サウス・ウェールズでも2種のスズガエルが絶滅し、残りのスズガエルの種も2割近くにまで減ってしまった。
中でも東部海岸沿いの渓流に生息するカエルは、最も劇的で予想外の減少を示した。この減少や消滅の直接的原因は未だ不明であるが、伝染性の病原菌(ツボカビ病を引き起こすツボカビの一種)が関係しているという明白な証拠がある。だが、減少の多くが生息地の破壊や捕食動物の侵入、汚染などが確認されていない地域で起こっていることが、問題を複雑にしている。個体群の減少が続く状況では、生息数のモニタリングや外界からの悪影響を明らかにする調査など、多方面にわたる戦術をもとにした調査が必要であり、それにより効果的な解決方法を考案することが可能になる。
1999年に刊行された地球上の両生類減少の原因を取上げた特筆すべき論文によると、オーストラリア、南米、そして北米におけるカエル減少の直接的原因はツボカビであると確認された(Berger他、1999)。より最近の北米での調査をもとにした論文では、地球の気候変動・紫外線の増加・菌に冒された初期胚の死、この3者の間にある関連性が導き出されている(Kiesecker他、2001)。ボランティア全員が知っているように、我々は、これらの各要因がオーストラリア東部におけるカエルの減少をもたらしている可能性について検討している。
何故この問題がそれほど重要なのだろうか?カエルのことを抜きにしても、北米の調査結果が正しければ、地球の気候変動と生物種絶滅との関連性を裏付ける証拠は十分にあることになる。気候変動と紫外線は、自然環境の変化に直接的影響を与えかねない。キエスカー氏と共同研究者は、アメリカ太平洋沿岸で降水量の減少を引き起こした気候がエル・ニーニョと関連があることを発見した。この話はまだ続く。カエルは通常の池よりも浅い場所で産卵していた。その結果、水深が浅いために卵は増加した紫外線にさらされ、カビによって腐食して死ぬのである。
問題は、これらの環境変化がオーストラリア東部でも起こっているのかということである。もしそうならば、気候は年によってかなり変動するのが普通なのに、何故、数種類のカエルがこれほど急速に消滅したのだろう?今日まで、ツボカビの研究は研究室で行われる菌の分析が大部分を占めていた。自然界のカエルの種や個体群に対する菌の影響についての生態学的分析は行われなかったのである。実際、自然の中における病原菌の生態と、それが野生のカエルの個体群に及ぼす影響に関するフィールドデータが集められたことはない。今日の状況は生物保護学者にとって情報収集が大きな挑戦課題となるが、これは多くのカエルを絶滅から救う上で非常に重要なものになるだろう。特に、以下の問題を解明する情報が必要とされている:
- 現在、どの種に影響が現われているのか?影響が認められる種と生息地との間に関連性はあるか?
- ライフサイクルなどの段階のカエル(卵、オタマジャクシ、幼体、成体)に影響が出ているのか?それぞれの段階における相対的な生存率はどれくらいか?
- 影響が出ている個体群の中で、菌に感染しているカエルの割合および菌の感染率はどれくらいか?
- 菌の感染範囲、感染率、季節的な感染範囲などに関する気候条件(温度、降雨量、湿度)はどうか?
こうした問題は、オーストラリア東部のカエルに重要な関わりがあるだけでなく、オーストラリアの他の地域に生息するカエルにも、さらに世界中のカエルにも深く関わっている。オーストラリアの東海岸で同定されたカビと形態学上、また遺伝子学上ほぼ同一なものが、中央アメリカのパナマで見つかった。パナマでも、オーストラリアで観察されたのと非常に似通った形で多数の生物種が減少している。この2種のカビが類似しているという発見(Berger他、1999)は、地球上のカエル社会に警鐘を鳴らすものである。昨年、我々は、“カエルの病気と減少”に関する国際会議で、アースウォッチのボランティアが集めたデータにもとづき、オーストラリア東部におけるカエルのツボカビ感染に関する発見を報告した。
調査の重要性:
両生類が減っている現象は、国際的なレベルで生物保護学者や自然管理官の論議の的になっている。これまでに4大陸でカエルの減少と消滅が報告されており、それぞれの状況で共通の特徴が見られた。しかし、減少の原因はまだ特定されていない。実際、原因は1つなのか、それとも複数の要因があるのかといった議論も起きている。だが今後、どれほど多くの両生類の他の種や個体群が影響を受けることになるのか予想できないため、原因の解明には緊急を要する。
解決策の発見は、原因に関する正確な知識がなければ難しい。環境が壊滅状態に向かって悪化していることを我々に警告する、いわゆる“坑道内のカナリア”の役割を両生類がはたしているのかどうかは定かではない。もしこのカエルの減少が、紫外線の増加、気候変動、あるいは大気汚染のような地球規模で起きている変化によるものだとしたら、我々自身の健康問題とも関わってくる。
両生類を、最も危機にある種と、そうでない種に区別する必要がある。そうすれば、最優先の種に調査の焦点を当てることができる。また、減少の原因を明らかにするためには、減少しつつある個体群を調査し、そこで何が起こっているのかを記録しなければならない。解決策を見つけるには、フィールド調査の役割が極めて重要になってくる。
社会政策の状況:
カエルが減っているという現象は、一般社会においても、かなりの注目を集めてきた。自然保護や土地管理に責任を負う公的機関、野生生物管理局、そして健康管理に関わる機関も、この状況に強い関心を寄せている。これらの注目は、広範囲に分布している脊椎動物が、このような短期間に、それも地球上の様々な生息地全域で減少していると、数人の有識者が警告を発したことにより引き起こされた。
オーストラリア東部では、いくつかの政府機関がこの問題の取り扱いに積極的に関与している。特に野生生物保護を担当する指導的機関であるニュー・サウス・ウェールズ国立公園と野生生物局は、調査結果と今後の方針を検討する定例会議のメンバーになっている。絶滅の危険があるカエル5種の回復計画の準備作業において、主任研究者は過去2年間にわたり、絶滅危惧種部(Threatened
Species Unit of the service)と緊密な協力関係を保ち、カエル病死症候群に関する調査を実施してきた。
一方、全国的な野生生物保護に責任がある連邦政府機関が、環境・自然/文化遺産省(Environment Australia)である。過去4年の間、主任研究者は調査関係資料の提供を政府機関から委託されていた。これは、環境保全/生物多様性保護法の下で、種の優先順位をつけ、リストを作成するために必要な文書を用意するためであった。アースウォッチのボランティアの援助により遂行されたフィールド調査は、政治家や一般市民に広くこの問題を伝えようとする政策の立案と、常に大きく関わってきたのである。
今後の公的政策や方針は、フィールド調査の結果を参考にして検討される。フィールド調査、研究、そして保護政策の進展と修正の間には、明確で確固としたつながりがある。これまで政策の進展は、その後の活動範囲に多大な影響を与えてきた。例えば、林業は現在、環境への影響を抑えるために考案された協定の範囲内で運営されているが、この協定は、絶滅危惧種の生態や生息地の必要条件を理解することによって改善されてきた。このような例は、オーストラリア東部で最近できあがった包括的森林資源地域評価指針(Comprehensive
Regional Assessment of Forestry Resources ) にも見られる。我々がアースウォッチのボランティアの協力を得て10年以上にわたって実施してきたフィールドワークは、国立公園内の特定生息地の有意義な保護に貢献し、長期にわたってこの環境遺産を守ることを可能にした。
b)プロジェクトの目的:
最終目標: 両生類が減っている現象の原因解明および解決策の探求。カエルの群れの保護状況は以下の方法で評価された。
- 特定の絶滅危惧種の監視
- 特定の絶滅危惧種の生態調査
- 絶滅に至る様々な段階の判別
- 絶滅に至る様々な段階での解決策の探求
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| V. 方法と技術 |
使用された方法は比較的簡単だが、かなり骨がおれる作業だったので、ボランティアは非常に貴重な存在であった。
フィールドでカエルを探す方法:
調査の対象となったカエルは多雨林の川岸地帯(川岸に沿っている地帯)に生息している。川の大きさは様々で、小さな澱み(流れの緩やかな場所)がある、幅1メートルにも満たない非常に小さい浅瀬から、大きな澱みを持つ、幅約5メートルのものまである。カエルは水生ではなく陸生なので、ほとんどの場合、森林の地面に座っているところを見つけることができる。調査対象は大きいものでは12cm(5インチ)になる、比較的大型のカエルである。
調査区域はそれぞれの調査地の川沿いに設定された。 夜間の調査:
- 8〜10人の調査メンバーから成るチームは、夕暮れ直後から、通常5時間近くかけて川岸を歩いた(調査区域での作業は平均4時間かかるが、活動していたところを見つけたカエルの数と、彼等を取り扱う時間によって異なってくる)。カエルを見つけるには、頭につける懐中電灯やスポットライトが使用された。また、呼び出し録音装置(オスを呼び出すために、携帯用スピーカーを使って事前に録音したオスガエルの鳴声を流す)もカエルを発見するために使用した。一連の調査方法は規格化されており、ボランティアはこの方法に沿って訓練を受け、同時に、一定の方法にこだわる理由が説明され、検討された。
- カエルは素手で採集された(これらのカエルは本来無害で人間をかむことはなく、毒も持たないので、訓練を受けたボランティアが負傷することは滅多にない。我々は、厳格な動物倫理ガイドラインと認定された手順に従って作業を行ったことを付け加えておく)。捕獲したカエルは、すぐに清潔なビニール袋に入れ、捕獲地点に数字が書かれた取り外し可能なタグを付けて、カエルを入れた袋にマーカーでその数字を書いた。
- 一連の手順は捕獲直後に行われ、カエルは正確に捕獲された場所に放された。所要時間は約5分間である。我々はカエルの重さを測り、性別を調べた。またカエルの様々な身体の部分を測定し、過去に作成された多くの成長曲線を参考にして、個体のおおよその年齢を判定した。以前に捕獲されたことがある個体は体内にPIT(主に魚に使用される体内埋め込み型の個体識別用チップで、それぞれ違う認識番号がつけられている)を持っているので、PIT読み取り機を使用し、その個体が過去に捕獲されたかどうかを調べた。同じ個体が再び捕獲された場合は、そのカエルのフィールドカードに個体番号が記載されていることになる。一方、初めて捕獲した個体には脊椎リンパ嚢に識別チップ(PIT)を注入し、併せて個体の健康状態(健康、怪我、寄生虫)も記録した。ボランティアはこれら全ての活動に参加するように訓練を受けたが、識別チップの注入作業には特別な動物種倫理許可証が求められるため除外された。
- 調査された個体群の中には、個々のカエルの再捕獲率が70%に上るものもあり、中には5年間で幾度となく捕まえられたカエルもいた。こうした技術を用いることで、カエルの平均余命(生存率)、棲み分け、個々の移動状況、縄張り、生息地などにおける性別や年齢による違いを比較することが可能になった。さらに、我々は繁殖力を知るために、生殖能力のあるメスガエルの数を調べることにも力を入れている。
昼間の調査:
- 水中の調査は、様々な特徴を見るために日中に歩いておこなわれた。オタマジャクシの数と棲み分けは特定の方法(網を張り、小さな透明アクリル樹脂でできた筒状の捕獲罠(Perspex
funnel
fish-traps)を仕掛ける)を利用して決定された。カエルが利用している様々な生息場所にある卵塊に対しても調査がおこなわれた(卵塊は川岸の真下や、浅瀬の岸に作られた原始的な巣の中で発見された)。
- 小川の物理的特徴(川の流れの速さ、濁りの程度、酸素含有量、有機物量)を測定した。
- 調査の際に、何度もマーカーで印をつけ直す必要があった。
日中・夜間の調査は共に、対象区域で3日間連続で繰り返しおこなわれた。これは、マーク・リキャプチャー試算を使った個体群の試算に充分なデータを集めるためである。
病気と瀕死状態のカエル:
- カエル病気症候群に関連した症状が見られる個体が発見された場合は、その個体の組織を病理学用の標本として採集した。
- 調査中のカエルの取り扱い、装置の殺菌、カエルの移動などは指針に沿って行われた。我々は小さな上皮を削り取る器具を使って、カビの菌が個体の皮膚に付着しているかどうかを調べられる技術を開発しようと努めた。この作業はフィールドでおこなわれた。
- 個体が瀕死の状態にあった場合、その個体は詳しい病理学検査のために、オーストラリア家畜衛生研究所に送られた。
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| VI. ボランティアの役割と業績 |
a) 遂行された役割
調査は2つのチーム、計21名のボランティアによっておこなわれ、チームメンバーは以下の作業を担当した:
- 小川の調査区域で昼夜おこなわれるカエルの探索
- 素手によるカエルの捕獲
- オタマジャクシの捕獲と蛍光ペンで印を付ける作業の手伝い
- 小川の中からすでに印の付いたオタマジャクシを探し出す作業
- 仔と成体のカエルの様々な測定値の記録
- カビに感染しているかを調べる小さな生体組織を採集する手伝い
- フィールドデータを記録システムへ入力する作業
- 小川の物理的特徴の調査、一連のマーキング作業、流れの深さと速さの測定、水温、溶存酸素量の調査
- 個体の行動観察
- 川から離れた場所にいるカエルを懐中電灯を使って探す作業
- 鳴声の録音と再生
- 森林に生息する他の脊椎動物の観察
- 生息地とカエルの行動の写真撮影
アースウォッチのボランティアは、以下のような順序でおこなわれた一連の活動を通してプロジェクトに関与した。
- この問題に関する初歩的な説明:この作業を行う理由、調査方法、研究結果は誰が使用するのかなど。
- フィールド作業の一般的注意事項の伝達:日中に現場に慣れておく、安全面から必ず誰かと共に行動する、チームワーク上の規律など。
- 調査方法に関する話と技術の研修:カエルの捕獲と取り扱い、体重の測定、性別の判定など、これらの技術は全て何度も繰り返され、ボランティアが助けを受けながら練習する機会は十分にあった。
- 第1回目の調査:教えられた方法を試し、実際にデータ収集をした。
- データの記録と分析:しばしば見落とされがちだが、記録用紙への記入作業、ダブルチェック、状況の予備分析など、前回行われた調査結果と単に比較するだけにしても、それぞれに時間がかかるのがフィールド作業の特徴である。
- 全体集会:意見を交換する機会は、ふさわしい状況を選んで開かれた。全体集会(前日の発見や出来事についての簡単な説明や、次のフィールド活動に向けての準備)は、2日おきに開かれ、これらの集会は質疑応答や問題を検討する機会を提供した。
非公式な討論やブリーフィングで取上げたトピックス:
- オリエンテーション
- 両生類減少問題の歴史
- 世界遺産であるオーストラリア東部多雨林の進化と生物地理
- オーストラリア独特の両生類;生物、生態、アボリジニー(原住民)の利用状況、進化
- 両生類減少に対する仮説
- 病原菌の役割と起源;ツボカビの影響
- まとめ;我々が達成してきたこととは?
b) ボランティアの貢献
チームは8箇所の調査地で計600匹以上のカエルを採集した。これらの個体は全て必要な処理を施され、集めたデータはデータベースに記録された。このうち3つの調査地では、多くの個体(3割強)が再度捕獲され、カエルの年齢、成長、行動パターン、生存率を実際に測定することができた。ボランティアの協力、つまり、この有能な21対の目と手がなければ、分析にあたり、これほど多くの個体を集めることはできなかったであろう。また、フィールドアシスタントの尽力にも心から感謝したい。正直な話、アンドリュー、カレン
、そしてロスの助けがなければ、主任研究者であるマイケルは僅かな数の個体しか採集できなかっただろう。
チームは3種類の絶滅危惧種について完璧な調査をするように努めた。そのため、8ヶ所の調査地で何度も調査をおこなった。密集した川岸の多雨林にある数ヶ所の調査地は長さが1キロ以上もあり、夜間、これだけの距離を川沿いに歩いたり、流れに入ったりする作業が困難であった事は言うまでもない。
もちろん、ボランティアは他の面でもプロジェクトに貢献した。彼らの多様な経歴、人生経験、身に付けた技術などによって、新たなアイディアや提案が生まれた。10代後半から60歳を越える年齢層を持つボランティアと共に作業し、相互理解と新密度が増していくのを見るのは本当に楽しい経験である。ボランティアのうち、2度目の調査にも参加してくれた数人に対しては、ボランティアと言うより仲間と思いたい。
c) 調査後に変更された研究方法、日程、目標
主な目標や方法は何の変更もなかったが、プロジェクト期間中は数々の細かい変更があった。変更の大部分は調査地の日程に関してである。当然のことだが、天候を考慮に入れ、上手く利用するには、日程はかなり融通が利く必要がある。 |
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| ?Z. 調査結果 |
a) 減少している絶滅危惧種のカエルの個体群の生態と統計学的数値
絶滅危惧種管理プログラムの一端として、川に生息するMixophyes属のカエル3種が長期間モニタリングの対象に選ばれた。(訳者注:ここで取上げられたMixophyes属のカエルは、日本のアカガエルに外見が良く似ており、Yahoo
U.S.A.に2種の写真が掲載されている) *Giant Barred Frog(Mixophyes
iterates)の調査結果:
3種のうちの1つ、giant barred frog(M.iteratus)はオーストラリア最大のカエルで、昔からある生息地の個体数が20%以下にまで減少している。我々の調査によると、健康でたくましい本種の個体群を作るには、少なくとも300匹の個体が必要である。この数を下回ると、確率論的環境の影響や個体数の影響として分類される様々な力が、個体群を絶滅に導くことになる。
- 大きな個体群が存在した調査地では、比較的バランスの取れた年齢構成が見られた。
- オスの数がメスを上回る、不均衡な性の比率が見られた。この不均衡の原因は、性差による死亡率や出生率の違いによるものではなく、むしろ標本の採集方法によるものだと考えられる。
- マーク・リキャプチャー調査により、若いカエルの方が大人のカエルよりも生存率が低いことが判明した。また、ライフサイクルの中で最も危険なのは、水生のオタマジャクシと変態直後(若いカエル)の期間である。成体になった個体は、身体が大きい順に生存率が上がる。これは、小さい動物を食べる捕食者の数の方が多くなるため、短期間に成体にまで成長した方が有利になることを示している。
- マーク・リキャプチャー調査により、大人のカエルはオス、メス共に高い率で一定の場所に留まることが明らかになった。メスの中には、1つの調査地の5メートル以内で立て続けに捕獲されたり、前の季節と同じ領域(10メートル内)で発見されたものもいた。これほど大きくて自由に動き回れるカエルだけに、川岸の多雨林という生息場所の制限があるとは言え、ほとんど分散が見られなかったことを発見したのは驚きだった。
- オスが縄張りを持つことについては明らかな確証を得た。彼らは、鳴声を次第に大きくしたり、侵入者に向かって飛びついたり、攻撃的な示威行動をしたりして、他のオスに向かって敵対行動を示したが、実際に身体を接触させての闘いは観測されなかった。
- 繁殖相手の選択は身体の大きさによるということが判明した。単に大きいオスの方が小さいオスよりも交接回数が多かったのである。
- 調査された通常より大きな2つの個体群の中には、病気、あるいは瀕死状態の個体は全く確認されなかった。
- 通常より小さな個体群では、ほとんどカエルを発見できなかった。こうした個体群では近年(過去2年)若い個体が見られず、調査期間中に繁殖している形跡も発見されなかった。この個体群は構成メンバーが死んで数を減らす一方であり、近い将来、群は絶滅するだろうと予測された。この調査地において、病気、あるいは瀕死状態のカエルを見つけることはなかったが、遭遇した成体のカエル自体がごくわずかだったので、そのような個体を発見する見込みはありそうもなかった。しかし、同じ調査地で採集された他の2種のカエルの組織標本からは、カビの感染が確認された。
*Stuttering Frog(M. balbus)の調査結果:
- 調査された3つの個体群は小さかったが、繁殖の証拠と多数のオタマジャクシがその領域で発見された。離れた場所にある別の澱み(流れが緩く、水たまりのようになっている場所)で蛍光マーカーを使用し、個々の集団に印をつけた結果、オタマジャクシは澱みの間を行き来することはなく(最低でも孵化後、5週間は流れの緩やかな場所に留まる)、生存率が高いことが判明した。
- 調査期間中、本種の産卵用の巣がボランティアによっていくつか発見され、これによってメスの生殖能力に関する情報が一気に増えた。また幸運にも、一連の求愛行動と交接を観察することができ、巣造りと交接をするための微小生息域の必要条件に関するデータが増した。
*Fleay’s Barred Frog(M. fleayi)の調査結果:
- 調査した最初の個体群は非常に小さかった。仔カエルがいる気配もなく(オタマジャクシも全く発見されなかった)、瀕死状態になった大人のカエルが1匹見つかっただけであった。昨年の調査と病理学検査によって、この調査地はツボカビの流行の被害を受けていたことが判明した。
- 2番目の個体群は、それに比べてかなり健全な状態だった。交接と巣造りが確認され、小川には多数のオタマジャクシがいた。この個体群では、ツボカビの感染は全く見られなかった。
- より大き目の個体群に対する数統計学的数値調査は、本種の寿命がM.iteratusほど長くないことを示している。
- 調査した3種類の行動は非常に良く似ていた。広範囲な調査はしていないが、マーク・リキャプチャ−・データは、本種も同地点に留まる率が高く、オスが縄張りを持つことを示した。
- 小川の構造と好まれる繁殖地との間には、強い関連性があった。
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| VII. 調査結果の検討 |
a) 目標の達成
調査結果は今年の目標を達成する、満足のいくものであった。主に気象条件のために全てが予定通りに進んだわけではないが、我々はプログラムを計画する際に、フィールドワークには不測の事態が起きるものだと承知していた。我々は、このプログラムにある全ての調査地を両チームが訪れるように計画し、予定をフレキシブルにすることで目標を達成し、前もって調査の必要があると考えていた全ての場所を調査するように努めた。
オーストラリア東部で起きているカエルの減少を説明する要因は、まだはっきり特定されているわけではない。我々は確かに、フィールドで病気にかかった個体を観察し、ツボカビがカエルの死に関与している事実は突き止めたが、気候変動・紫外線の増加・カエルの病気という3つの問題の明白な関連性を、まだ発見していない。だが我々の研究は、こうした問題に取り組み始めたばかりであり、将来、影響が有ったかどうかを見極めるために不可欠な統計学的数値の基本データを揃えたところなのである。さらに現在のところ、個体群データは、病気や他の要因がその領域で活性化しているかどうかを判断するのに、最も役に立つ資料なのである。
b) プロジェクトの次の段階および研究結果の今後の方向性に対する影響
プログラムの次の段階は、種と個体群が安全で減少していないかどうかを判断するために個体群のモニターを続けていくことである。蛍光ペンで印をつける方法がうまくいっているオタマジャクシ段階のモニターを、もっと広範囲に実施することを考えている。
c)結果はこのフィールド調査をどのように前進させ、政策立案にどう貢献するか?
個体群の調査結果は、我々が小川に生息するカエル個体群の構造と、川岸の森林生態系における彼らの役割と重要性を理解するのに大変役立った。作成した年齢構造と成長曲線により、個体群を構成する個体数が安定、増加、減少の、どの状態にあるのかを迅速に評価することができる。これは、大規模な調査をせずに、様々な個体群と生息地を比較するのに大きな助けとなる。単に作成された健康な個体群の年齢構造だけでも、一定の調査対象と偏らない標本採集技術を使えば、あらゆる個体群の構造を比較することが可能である。
今回の個体群調査によって、特定の個体群に関するデータベースも大幅に追加された。これにより、両生類の間で起こっている個体群が減るという現象を評価し、また予測可能な減少の原因をいくつか挙げることも可能になった。調査結果は、生物種多様性の価値を裏付ける責任を負う管理機関に対して直接影響を与える。例を挙げると、調査結果の一部に応じて、小川でカエルを扱う作業員全員を対象にした衛生指針がオーストラリア全土で改善された。この指針は、多数のカエルが減少した原因だと考えられている病原菌の蔓延を防ぐ目的で作られた。
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| IX. 出版物 |
今年の研究に関する出版物はないが、great barred river frogsの回復方法に関する研究論文は、じきに完成する。これは、この1年間にわたって行われた観察のまとめである。
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| X. その他の功績 |
| 参加者のうち数人のボランティアは、自然保護、教育、そして地域社会活動の分野において長年の経験を持ち、その豊かな経験は我々の調査にとって大変役に立ちました。特に、従業員数名を参加させたリオ・ティントと、受賞者数名が参加したアースウォッチ・ミレ二アム賞の支援に対し、感謝の辞を述べたいと思います。2番目のチームにはHSBC(ロンドンに本社を置き、多額の助成金をアースウォッチに提供している金融グループ)の従業員が参加し、我々は彼らの強い熱意に助けられました。最後に、我々の研究チームメンバー(マイケル、カレン、アンドリュー、ロス、そしてハルコ)から、素晴らしい友情、ユーモア、そして共に体験を分かち合ってくれたことに対し、全てのボランティアに感謝の気持ちを伝えたいと思います。
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| XI. 謝辞 |
a) スタッフ一覧と科学者
Dr. Michael Mahony 主任研究者
Mr. Harko Werkman 主任研究者
Ms. Karen Thumm フィールドアシスタント
Mr. Andrew Stauber フィールドアシスタント
Mr. Ross Knowles フィールドアシスタント
プロジェクト期間中、我々はニュー・サウス・ウェールズ州森林省より、フランク・レムカート博士の訪問を受けた。
ニュー・サウス・ウェールズ州森林省とニューキャッスル大学の生物科学部によるプロジェクトへの支援に感謝いたします。
マイケル・マホニー博士の監督下で行われた全ての調査と手順は、以下の許可に従い実行された:ニュー・サウス・ウェールズ国立公園野生生物局科学認可No.A175、ニュー・サウス・ウェールズ森林省特別目的認可No.05436、ニューキャッスル大学動物保護/種委員会、動物種認可No.488
1098 b) 協力機関リスト
ニュー・サウス・ウェールズ州森林省 (State Forest of New South Wales)
ニュー・サウス・ウェールズ国立公園野生生物局 (New South Wales National Parks and Wildlife
Service)
南オーストラリア博物館、生物進化局: 遺伝子分析の組織サンプルが、博物館の遺伝子組織貯蔵庫に保管されている。
(Evolutionary Biology Unit, South Australian Museum) c) 追加資金の受諾承認
ニュー・サウス・ウェールズ州森林省からの援助金1400オーストラリアドルは、四輪駆動車を購入に使われた。 |
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| ■ 関連プロジェクト |
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オーストラリアの消え行くカエル
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| 翻訳:アースウォッチ翻訳ボランティア |
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